Poster Design

東北秋冬観光ポスター

東北の秋と冬の魅力を表現する観光ポスターについて、
作者の想いをご紹介します。

東北にある、日本人が憧れを抱く原風景。
その魅力をどうやって伝えるか。各県にある東北ならではの魅力を、一枚の紙でどう表現するか。導き出した答えが、もっとも東北らしい景色を連想させるイラストでした。手がけたのは、Googleストリートビューを見て描いた世界の風景画で脚光を浴びた画家・イラスレーターの辰巳菜穂さん。テーマごとに制作したこれらのポスターには、「この景色を見た方々が、自分を投影しながら旅をしてくれたら」という思いが込められています。

辰巳菜穂

画家 / イラストレーター

PROFILE

福島県郡山市生まれ。筑波大学芸術専門学群建築デザイン卒業。2017年よりGoogleストリートビューで世界中を旅し、独自の色彩と感覚でとらえた風景を描く「Street View Journey」を展開。東京を拠点に活動し、海外でも展示を行う。広告、書籍、アパレルなどのイラストレーションも多数手がけている。

それぞれが思う東北を描く

このお話をいただいたとき、生まれ育った東北に自分の絵で貢献できる嬉しさと同時に、大きな役割へのプレッシャーも感じました。私は福島県の郡山市に生まれ、田んぼの真ん中に建つ家で育ちました。夏は賑やかに鳴くカエルやたくましく伸びる稲に生命力を感じ、冬は背中を丸めてじっと耐えるような、乾いた土の匂いを嗅いで暮らしました。季節が移り変わるとき、その土地ならでは色や匂いや音が感じられるのだと思います。そんな実体験を思い出しながら、五感で感じられるような東北の原風景を表現できたら。そう考えました。

まずはイメージを膨らませるため、すでに公開されていた特設サイトであらゆる観光スポットをひたすら探りました。そこには今まで知らなかった素晴らしい景色がたくさんあり、分厚いスケッチブックがすぐにいっぱいになりました。それから完成に至るまでには何度もアイデアを出し合い、議論を交わし、また構図を練る。その繰り返しでした。

今回、描いたのは東北らしいモノやコトとして代表される、歴史、温泉、花(夏版では祭)、自然、食・酒という5つのテーマです。そこからさらに各テーマごとの魅力を深く掘り下げ、それらが重なり合った風景をつくっていく。つまり、描くのは「実際にはないけれど、どこよりも東北らしい風景」です。それぞれのポスターで、一人ひとりの心の内側にある「東北」の姿を、私なりに表現できたように思います。ぜひ皆さんには、東北を巡り感動的な体験に出会う自分の姿を思い描いてもらえたら嬉く思います。そして実際の東北の風景へと繰り出してみてください。

また、東北には震災の影響で厳しい生活を強いられている方が、今でもたくさんいらっしゃると思います。そうした方々に対してもこのポスターが、かつての故郷の姿を重ね、改めてその素晴らしさを思い起こすきっかけになれることを願っています。

春 版
夏 版

「歴史」

時間の経過を目のあたりにするとき、もの悲しくも生きる力がみなぎるように感じることがあります。苔むした古木のひんやりとした手触りまで感じてもらえたらうれしいです。

「温泉」

海とつながっているような絶景の露天風呂と、そこに輝く朝日の豊かな色彩を感動的に描きたいと思いました。こうやってお湯を楽しむ贅沢な時間を、一生に一度は過ごしてみたいものです。

「花(桜)」

背後に雪山を望んで咲き誇る桜は、厳しい自然を生き抜いてきた東北の人々の姿と重なるように思います。東北ならではの春の風景をダイナミックに描きたいと思いました。

「自然」

キンと冷えた雪解け水の上を清々しい風が流れ、新緑を揺らしています。春の訪れを感じて、深呼吸したくなる景色を思い描きました。流れる水の音を聞きながら、旅人は何を思っているのでしょうか。

「食・酒」

田植えを終えたばかりの水田を眺めながらいただくお酒は格別なことでしょう。厳しい自然のなかで生き抜く知恵や工夫がつまった東北の滋味を、ぜひ味わっていただきたいです。

「自然」

水の音に誘われ歩いた先に、絶景の滝がありました。そこにたどり着くまでにかいた汗が、ひんやりと乾いていきます。きっと、東北のどこかにあるこの絶景に出会えたら、アスファルトに囲まれた夏の蒸し暑さが、遠い世界に感じられることでしょう。

「食」

強い夏の陽射しと青い空。そんなシーンに似合うのは、キンと冷えたお酒と、大海を望んでいただく海の幸。旅を楽しみながら、その土地ならではの食材を囲む幸せ。ぜひ感じていただけたら嬉しいです。

「祭」

お祭りの熱気や独特の音色、伝統の衣装や踊りには励まされるものがあります。現地で体感したら、小さな不安や寂しさなんて吹き飛んでしまうことでしょう。夏の夜空に轟く花火とともに、その熱気を少しでも届けたいと思って描いた一枚です。

「歴史」

古い建物は壊され、街はどんどん変わってしまうのが世の常。けれど、いつまでも残っていてほしいと思う町並みが、東北にはたくさんあります。人々の素朴な暮らしや、その風土を考えて築かれた建物たちがつくる世界に浸ってみてください。

「温泉」

秘境の温泉で、満点の星を眺めながらお湯に身をあずけることができたら、心が喜ぶ豊かなひとときを過ごせることでしょう。東北の山奥にひっそりとある、なかなか出会えない風景を思いながら描きました。

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