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大石 卓
横手市増田まんが美術館 館長
秋田県横手市出身。増田町役場、横手市役所職員として2007年から13年間美術館の担当を務め、退職後2020年4月からは『横手市増田まんが美術館』館長に就任。併せて、文化庁の委託事業として「マンガ原画アーカイブセンター」のセンター長も兼任し、原画保存に取組んでいる。
取材日:2021年4月16日


原画にしかない情報と美を間近に
故・矢口高雄さんが「釣りキチ三平」や「おらが村」で描いた風景。まるで日本という国の原風景のような抒情を色濃く残す秋田県横手市に、『横手市増田まんが美術館』はあります。2019年5月にリニューアルオープンを果たし、現在、矢口高雄さんをはじめ180名以上の漫画家たちの原画を収蔵しています。
「ミュージアムの存在意義は、“本物を見ることができる”こと。絵画や彫刻と同じように、マンガも原画には原画にしかない情報、そして美しさが刻まれています。筆圧やインクの滲み、鉛筆書きのネームやホワイト修正の痕跡。これらは、印刷され出版されたマンガではもはや見ることのできない貴重なもの。こうした“本物”を間近に見ることは、漫画家を目指す人にとってはもちろん、読者としてマンガを愛してくださっている人にも大きな感動をもたらしてくれるでしょう」
シンボルツリーのある展示室では、ツリーを囲むようにらせん状になったスロープ沿いと2階の1室に74作家の原画を展示。約2万5000冊を蔵書するマンガライブラリーや企画展のための展示スペース、巨大なマンガウォールが飾られたギャラリーショップ、カフェなどが伸びやかに配置されています。ミュージアムの心臓部となるのが、「マンガの蔵」とそのアーカイブルーム。マンガ原稿の保存・収蔵という過去に例のない取組ゆえ、大石さんをはじめスタッフたちは最新鋭かつオリジナルのシステム構築に苦心したと言います。
「ガラス張りの収蔵庫は、24時間途切れることなく温湿度管理され、原稿にとって最適な保存状態を保っています。他のどんな美術品とも性質が異なるので、保存方法は独自に開拓しました。時代によって紙質もインクの性質も異なるので、一律の条件では管理できないことも。世界で初の取り組みですから、保管収蔵そのものの記録を残していくことも必要でしょうね」
アーカイブのためのネットワークづくりへ
「東日本大震災が起きたその時、私は宮城県石巻市の石ノ森萬画館を訪れていました。ともにマンガという文化を後世に残そうとしている施設として尊敬しているし、個人的にもすごく好きな場所。矢口先生や石ノ森先生を筆頭に、東北にはすばらしい漫画家がたくさんいます。東北各地に美術家の名を冠した素敵な美術館があるように、漫画家の美術館ももっとできたらいいな、と思います。そして、文化遺産としてのマンガのアーカイブ収蔵を担う場所も、もっとできてほしい。原画保存という一大事業のネットワークづくりが、これからの私たちの課題です」
取材日:2021年4月16日
「東北のアート情報はこちら」


人気絵本のふるさと
馬場のぼる「11匹のねこ」(青森県三戸町)
絵本「11ぴきのねこ」シリーズで知られる馬場のぼる(青森県三戸町出身)の絵本に登場するキャラクターたちが町のいたるところに。石像、店頭幕、郵便ポストをはじめ、フルラッピングされたバスや電車も走る、ファンにとってはまさに聖地。

花とアートの森
石神の丘美術館(岩手県いわて町)
岩手県初の野外彫刻美術館として1993年に開館。約14haの石神山の斜面を利用した屋外展示ゾーンは、ピクニック気分でアートと四季の草花を楽しみながら散策できる。また、「恋人の聖地」にも選定されており、敷地内に銘板が設置されている。
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©Reborn-Art Festival/Kohei Nawa
アートで創る復興と循環
Reborn Art Festival 2021(宮城県石巻市)
リボーン・アートフェスティバルは、「アート」「音楽」「食」の総合芸術祭。石巻市街地を始め、美しいロケーションの牡鹿半島を会場として現代アート作品を鑑賞できるほか、地元食材を使った料理や音楽イベントなどを楽しめる。


ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。
人気キャラがマンホールに!
ラプラスマンホール(宮城県)
「みやぎ応援ポケモン」に任命された「ラプラス」をデザインしたマンホールが、宮城県内全市町村の観光施設などで設置が進んでいる。種類が豊富でデザインも秀逸なので、県内を訪れた際にはチェックしたい。

見事な池泉回遊式庭園
旧池田家住宅洋館(秋田県大仙市)

近代の東北三大地主の一人、池田氏が建築した大正浪漫漂う白亜の洋館(国重要文化財)。見所は、内装を彩る、今では幻と言われる「金唐革紙」。広大な庭園は国の名勝に指定されている(旧池田氏庭園)。園内に所在する米蔵では、昨年国有形文化財に登録された鈴木酒造店を紹介する企画展を8月末に開催予定。

郷愁誘う木版画との出会い
池田修三まちなか美術館
(秋田県にかほ市)

池田修三は、ノスタルジックな子どもたちの木版画で知られる秋田県にかほ市象潟町出身の木版画家。毎年秋には「池田修三まちびと美術館」が開催され、地元商店や飲食店に飾られた作品を鑑賞しながら街歩きが楽しめる。今年はDC特別企画として、4~9月にも開催される。

大正浪漫漂う
文翔館(山形県山形市)
山形県郷土館文翔館は、1916年に建てられたイギリス・ルネサンス様式を基調としたレンガ造りの建築物。1984年に国の重要文化財に指定、1986年から保存修復工事が行われ、現在一般公開されている。映画「るろうに剣心」のロケ地としても話題に。

あのキャラクターにそっくり!
小杉の大杉(山形県鮭川村)
映画「となりのトトロ」のトトロに似ている事でも有名な樹齢約千年の大杉。夫婦杉、縁結びの木、子宝の木とも言われ、パワースポットとしても人気。「死ぬまでに行きたい!世界の絶景 日本編」にも掲載された名所。
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©BNP, FUJITV/おしゃれサロンなつなぎ
話題の青春群像劇
アニメ映画「フラ・フラダンス」の舞台(福島県いわき市)
フラガールを仕事に選んだ主人公と、同期の仲間たちの成長を描く青春群像劇「フラ・フラダンス」。オリジナルアニメ映画として、2021年度公開予定。舞台となった福島県いわき市を巡る、聖地巡礼もお薦め。
※多くの観光施設やイベントが新型コロナウィルス感染症の影響で一時閉鎖・中止・延期になっています。状況は日々変動しますので、訪問前に主催者の公式ページでご確認ください。