伝統工芸

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私のおすすめ!伝統工芸

橋本 広司

高柴デコ屋敷観光協会 橋本広司(ひろじ)民芸

東北DC特別企画

福島県郡山市生まれ。5人兄弟の長男として15歳の時に父のもとで修業を始め、橋本工芸17代目を継ぐ。現在は広司さんの長男将司さん、長女明恵さんとともに、伝統の張り子人形はもちろん現代的なモチーフ・デザインの張り子人形も創作している。

 
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伝統工芸

 

庶民に愛された、軽快で鮮やかな張り子人形

──天神夫婦桜や枝垂れ桜もほころび始めるころ。橋本広司さんの工房にはあたたかな春の光が縁側から射しこみ、張り子人形も塗った端から乾きそう。

広司さん こうした自然光のもとで色付けするのが、いちばんいい。だから仕事は、日が暮れたらおしまい。

──そう笑う広司さんに三春人形の歴史を尋ねれば、はるか元禄のころに遡りました。


広司さん 私ら一般庶民には、陶器だの織布(しょくふ)だのでできた人形は高価で買えなかったから、代わりに張り子や土で人形を作ったんだね。お雛さまや干支の動物、だるまにお面、大黒さまや恵比寿さま、歌舞伎や浮世絵に題材をとったものなど、その頃から今と同じ130種くらいは作ってたんでないかな。
都の華やぎに憧れて、色彩は原色を基調にうんと鮮やかにしてね。“そういう色使いが宮城県の堤人形と似てるなあ”と思って興味を惹かれ、人形職人の芳賀強さんに会いに行き、色彩の話で頷き合ったり。他にも、こけしや笹野一刀彫といった憧れや願いを投影した工芸品にも惹かれるね。また、もともと農家の冬仕事だったから、同じように武家の内職だった秋田の川連(かわつら)漆器や曲げわっぱにも親近感を持つね。

  • 堤人形

  • 笹野一刀彫

広司さん 江戸の頃に生まれた工芸は藩制の枠組みの中で発展してきたもの。だからこそ地域ごとにとても個性豊かで、特色に満ちているんだと思うね。特にここ高柴は、山に囲まれた中に10数軒の職人たちが寄り添ってものづくりに励み、つつましく暮らした場所。ここで生きること、ここで作ることをひたすら続けてきたからこそ、”過去も未来もなく、あるのは今だけ、今の一瞬しかない”との思いに至ったんじゃないかな。ご先祖の描線には、我欲がない。自然のまま、感じたままに筆を走らせ、表現している。だから、人形が人形として生きている感じがする。自分もそのようにつくりたい、と思うけども、実は今でもそれはなかなか難しいよね。自分の気持ちが沈んでいるとそれが、人形にまで伝わっちゃうんだ。でもね、そんなときひょっとこ踊りをすると無心になっていいものが作れる気がする。

──高柴七福神踊りは、西田町に300年前から伝わる伝統の踊り。踊りながら練り歩く七福神の後を、福餅を配りながら踊り歩く小正月の行事に端を発しています。

広司さん ひょっとこは(かまど)の神さま。ひょっとこの面をつけて踊るという行為は、神懸かりになることなんだよね。踊りが激しくなればなるほど、心は無になり、自分でないもの=神さまの()(しろ)になる。“ああ、人形作りも一緒だなあ”と。

いきいきとした魅力を、暮らしの中に

──黙々と筆を走らせる広司さんと将司さんの横顔には、ひょっとことおかめに扮して踊っている時の激しさ、ユーモラスさは見当たりません。けれど、できあがった人形はどれも愛嬌に満ちていて、いきいきとした魅力をたたえています。

将司さん この動きのあるかたちは、紙の張り子人形ならでは。土人形だとどうしても重心を下に置かざるを得ないけれど、紙なら自在ですし、パーツごとに作って組み立てることができるので軽やかな動きもつけてやれる。伝統のデザインを踏襲した作品が多いですが、若い方たちにも気に入ってもらえるような新しいデザインのものも少しずつ増やしています。手作りのよさは崩さず、100年先、200年先もずっと愛される人形を作っていきたいですね。

──将司さんはそう言いながら、だるまと福島名物のラーメンとが合体したカラフルな豆だるま「だるラー」の絵付けを始めました。この小さな新名物に出会える日も、もうすぐです。

「伝統工芸」

  • 撮影:VISITはちのへ

暮らしの知恵が光る

南部菱刺・南部裂織(青森県南部地方)

青森三大刺し子のひとつ南部菱刺。青森の自然を映したような鮮やかな模様は、数百種類とも言われている。古布を手で裂いたものを横糸に、地機で織りあげる南部裂織もまた、昔、貴重な布を大事に使おうと先人が生みだしてきた伝統工芸だ。共にVISITはちのへ(ユートリー)で製作体験もできる。(2021年3月現在休止中)

info
一般財団法人VISITはちのへ 0178-27-2227
access
JR八戸駅から徒歩約1分

深みのある独特の風合い

津軽金山焼(青森県五所川原市)

金山の大溜池に堆積した粘土を、釉薬を使わずに高温の登り窯でじっくりと焼き締めた津軽金山焼。月4~5回の窯焼きは自由に見学可能。ギャラリーではコーヒーカップなどの小品から大きな花器までを展示販売している。

info
株式会社津軽金山焼 0173-29-3350

津軽の工芸を五感で

津軽伝承工芸館・津軽こけし館(青森県黒石市)

「津軽伝承工芸館」では、津軽塗など伝統工芸の実演が見学できる。隣接する「津軽こけし館」では、こけし作りの実演や全国のこけしの鑑賞、こけし絵付け体験が楽しめる。

info
津軽伝承工芸館 0172-59-5300
access
弘南鉄道黒石駅から車で約25分

漆の美を体現

浄法寺漆・滴生舎(岩手県二戸市)

国産漆の約7割を生産する二戸市浄法寺町。その良質な「浄法寺漆」は、中尊寺金色堂や日光東照宮、金閣寺など国宝や重要文化財の修理修復にも利用されている。滴生舎では、その美しい艶と色あい、肌触りを生み出す工房の見学や漆ストラップつや出し体験が楽しめる。

info
滴生舎 0195-38-2511
access
JR二戸駅からバスで約30分、徒歩約10分

鉄器の名品に出会う

南部鉄器(OIGENファクトリーショップ)(岩手県奥州市)

南部鉄器は盛岡市と奥州市で作られている。うち奥州市の鉄器は、平安時代末期、藤原清衡が近江国から鋳物師を招き、武具などを作らせたのが始まりとされる。昭和初期には、日用品の生産が本格化し鋳物産地として東北一に。その優れた品質から日本を代表する伝統工芸品となっている。OIGENファクトリーショップでは予約制で工場見学も行っている。

info
及源鋳造株式会社 0197-24-2411
access
JR水沢江刺駅から車で約3分

朱・黒・金の調和

秀衡塗・丸三漆器(岩手県平泉町)

奥州平泉の雄・藤原秀衡が京から職人を招来し、この地方特産の良質な漆と金をふんだんに使って作らせた秀衡塗。朱と黒、そして金で描かれた源氏雲、有職菱文様、春秋草花紋。そして丸みを帯びたフォルムの雅趣は現代の生活にも調和し、愛され続けている。丸三漆器では、秀衡塗の漆絵職人と絵付け体験も楽しめる。

info
丸三漆器 0191-75-3153

個性豊かな5系統

みやぎ伝統こけし(宮城県)

江戸時代末期、東北地方の温泉地のお土産品として生まれたと言われているこけし。宮城県内には鳴子こけし、遠刈田こけし、弥次郎こけし、作並こけし、肘折こけしの5系統があり、簡略化された造形美と清楚で可憐な姿が大きな魅力となっている。

info
鳴子木地玩具協同組合 0229-83-3600(4月以降問い合わせ可)
みやぎ蔵王こけし館 0224-34-2385
弥治郎こけし業協同組合 0224-26-3993
仙台地区伝統こけし工人組合 022-394-6030

光の加減で玉虫色に

玉虫塗(宮城県仙台市)

艶やかに照り返す発色と光沢が特徴の玉虫塗。1932年、国の初めての試みとして仙台に設置された国立工芸指導所で生まれた新たな漆工技術は海外でも高く評価され、近年ではアニメ作品とのコラボなども。現代生活の中で活きる「用の美」を体現している。

info
有限会社東北工芸製作所 022-222-5401

黒々とした艶

雄勝(おがつ)(宮城県石巻市)

約600年の伝統を有し、伊達政宗公も大いに賞賛したという雄勝硯。その特性は圧縮や曲げに強く、給水率が低いため経年劣化しにくい。鋒鋩(ほうぼう)の粗さ、細かさ、堅さ、柔らかさが丁度良いバランスになっていることや、女性の黒髪のような「つやとすべり」が特徴。

info
雄勝硯伝統産業会館 0225-57-3211
access
JR石巻駅から車で約50分

職人技が光る逸品

仙台箪笥(宮城県)

仙台箪笥は「指物」「漆塗り」「金具」の職人の合作によって生み出される重厚な箪笥。木地は欅や栗などで、打ち出しの(かざり)金具が特徴。塗りは木目が見える木地呂塗りで横型の一本物が仙台箪笥の基本形とされる。

info
仙台箪笥協同組合 022-225-8368

重厚な艶が特徴

川連(かわつら)漆器(秋田県湯沢市)

源頼朝の家臣である小野寺重道が、領民の冬の内職として武具の漆塗りを推奨したことに発する。江戸の後期には日用食器としての椀づくりが始まり、その堅牢さで人気に。幾重もの地塗りに中塗り、そして花塗りを重ね、繊細で立体感たっぷりに施された沈金が特徴。

info
湯沢市川連漆器伝統工芸館 0183-42-2410
access
JR湯沢駅から車で約20分

柾目美しき木の風合い

大館曲げわっぱ(秋田県大館市)

藩政時代、地域の豊富な森林資源を活かした武士の内職として奨励され、近代まで技術が受け継がれている。木の香りや吸湿性、断熱性、軽量性といった特長は、弁当箱やお盆などの代表的な製品はもちろん、現代のライフスタイルに合わせた製品にも活かされている。

info
大館曲げわっぱ協同組合 0186-49-5221

繊細な銀の輝き

秋田銀線細工(秋田県秋田市)

直径0.2~0.3mmほどの細い純銀の線を撚り合わせ、職人の繊細な指先から作られる。江戸時代から脈々と受け継がれてきた技術に、新たな技法やデザイン性が加えられ、「秋田銀線細工」として独自なものとなった。近年はそのデザインがさらに多彩となっている。

info
秋田市工芸振興協議会(秋田市産業振興部産業企画課内) 018-888-5725

生活に根差した手工芸

樺細工(秋田県仙北市)

樺細工は山桜の樹皮を使った手工芸であり、今でも暮らしの中で広く愛用されている。1976年には秋田県で初の通産省の「伝統的工芸品」に指定。「樺細工伝承館」では樺細工資料を展示し、製作の実演も見学できる。

info
仙北市観光情報センター「角館駅前蔵」 0187-54-2700
access
JR角館駅から徒歩約15分

競技用けん玉の生産量日本一

けん玉(山形県長井市)

日本けん玉協会が設立された1975年に競技用けん玉の生産を開始。民芸品と異なり1ミリの誤差も許されない厳しい規定のもと、今や全国生産量の7割を占めるほどに。2015年にオープンした「けん玉ひろばSPIKe」では、けん玉道の級位認定やけん玉ペインティングなどが楽しめる。

info
長井けん玉のふる里プロジェクト実行委員会事務局(長井市商工観光課観光振興係) 0238-84-2111

鷹山公ゆかりの鷹

笹野一刀彫(山形県米沢市)

1,200年前から伝わる笹野一刀彫。米沢市笹野地区の特産であり、サルキリという独特な刃物一本で彫り上げることからその名が付き、上杉鷹山が農家の副業として「おたかぽっぽ」造りを推奨したと言われている。笹野民芸館では、おたかぽっぽの絵付け体験が楽しめる。

info
米沢観光コンベンション協会 0238-21-6226
access
JR米沢駅から車で約15分

北前船寄港の地で

傘福(山形県酒田市)

江戸時代から酒田に伝わるつるし飾りの一つで、女性たちが一針一針心を込めて子孫繁栄や無病息災、家族の幸せを願う傘福。1895年(明治28年)建造の旧料亭・山王くらぶでの展示には製作体験のメニューも用意され、粋で瀟洒(しょうしゃ)な湊町文化とともに楽しむことができる。

info
山王くらぶ 0234-22-0146
傘福くらぶ 090-431-3867

日本の(あか)をつくる町で

紅花(摘み取り体験、紅花染め)(山形県白鷹町)

白鷹町は、古くから本紅の原料などとして使われる最上紅花の生産量日本一の町。ここでは紅花の摘み取り体験ができるほか、紅花染め体験ではハンカチやストールを染める特別な体験ができる。

info
一般社団法人白鷹町観光協会 0238-86-0086
access
畑・施設により異なる(最寄駅)山形鉄道荒砥駅

雪深い奥会津の冬の手仕事

奥会津編み組細工(福島県三島町)

積雪期の手仕事として山間部で採取されるヒロロ、山ブドウの皮、マタタビの蔓などの植物を素材とする編み組細工。日常の生活に用いる籠や笊などが伝承されており、自然素材を用いた堅牢かつ素朴な手編みが特徴で根強い人気を誇っている。

info
三島町生活工芸館 0241-48-5502

世界に1つの赤べこ

赤べこ絵付け体験(福島県柳津町)

会津張り子の代表的なモチーフでもあり、古くから魔除けや疫病除けの縁起物として会津の人々に親しまれてきた赤べこ。赤べこ伝説発祥の地である柳津町で、自分だけのオリジナル赤べこが製作できる絵付け体験を。

info
憩いの館ほっとinやないづ 0241-41-1077

魂は浪江に

大堀相馬焼(福島県浪江町)

福島県浪江町大堀地区に伝わる大堀相馬焼。熱膨張の異なる複数の釉薬づかいによる「青ひび」、二重構造の「二重焼」、狩野派の筆法とされる「走り駒」の絵など実に個性的な特徴を有している。現在は県内各地で11の窯元が再開、新たな作品づくりに取り組んでいる。

info
大堀相馬焼協同組合 0243-24-8812

氷をまとったような着心地が魅力

からむし織(福島県昭和村)

「からむし」は苧麻とも呼ばれる植物の茎から取り出された繊維、織り上げられた布は軽くしなやかで、独特のハリがもたらす涼しい着心地も魅力。古くから続く技術が評価され2017年には「奥会津昭和からむし織」として国の伝統的工芸品に指定。

info
道の駅からむし織の里しょうわ 0241-58-1655
access
JR会津川口駅からバスで約40分

※掲載されている情報は2021年6月現在の情報です。ご利用の際は、予めお問い合わせ先にご確認下さい。

※写真・イラストはすべてイメージです。実際と異なる場合がございます。

※多くの観光施設やイベントが新型コロナウィルス感染症の影響で一時閉鎖・中止・延期になっています。状況は日々変動しますので、訪問前に主催者の公式ページでご確認ください。

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